特定技能雇用契約書・雇用条件書の書き方|作成時の7つの注意点を徹底解説

特定技能人材の採用・雇用を検討する企業担当者様にとって、避けて通れないのが「特定技能雇用契約書(参考様式第1-5号)」および「雇用条件書(参考様式第1-6号・別紙)」の正確な作成です。

特定技能制度は、深刻な人手不足を解消するための即戦力となる在留資格ですが、出入国在留管理庁(入管)への出入国在留管理手続きにおいて書類に不備や記載漏れがあると、申請の不許可や大幅な補正指示、最悪の場合は不適正な受入れとして欠格事由に該当してしまうリスクがあります。

本記事では、企業の外国人雇用担当者様や初めて特定技能を受け入れる事業者様に向けて、出入国在留管理庁の運用要領に基づき、様式作成時の必須注意点とステップ別の具体的記入手順を分かりやすく解説します。

特定技能雇用契約・雇用条件書作成における7つの鉄則

特定技能外国人との雇用契約締結および出入国在留管理庁への申請において、実務上絶対に押さえておくべき7つの重要ルールがあります。作成を開始する前に、必ず以下のポイントをクリアしているか確認してください。

【実務上の最重要注意点チェックリスト】

1. 本人が十分に理解できる言語での作成と署名・押印
申請人が十分に理解できる言語(母国語や対訳)により書面を作成し、内容を十分に説明した上で本人が理解・合意している必要があります。特定技能雇用契約書および雇用条件書には、外国人本人が内容を十分に理解した上で、本人による署名を行います。

また、特定技能雇用契約書(参考様式第1-5号)および雇用条件書(参考様式第1-6号)には、受入れ機関による押印が必要です。申請時には、両方の書類について、受入れ機関側の押印漏れがないか確認してください。

2. 「フルタイム」所定労働時間要件の充当
特定技能外国人の所定労働時間は、通常雇用される一般のフルタイム労働者と同等でなければなりません。原則として「労働日数が週5日以上かつ年間217日以上」かつ「週労働時間が30時間以上」を満たす必要があります。1年単位の変形労働時間制などを採用する場合は、労働基準監督署へ届け出た協定書の写しおよび本人が理解できる言語を併記した年間のカレンダーの写しを添付する必要があります。

3. 業務内容および従事範囲の特定
介護、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設などの各特定産業分野の省令・運用要領で認められた「従事させる業務(相当程度の知識・経験を要する技能業務)」を明確に特定して記載します。専ら清掃や雑務などの付随業務のみを行わせる記載は不適合となります。

4. 日本人と同等額以上の報酬設定と差別的取扱いの禁止
外国人であることを理由として、報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について差別的な取扱いをしてはなりません。同じ職務・責任を担う日本人労働者と同等額以上の報酬を設定する必要があります。

また、基本賃金を時給換算した場合に、勤務地に適用される最低賃金額を下回らないことも重要です。最低賃金は都道府県ごとに改定され、毎年10月頃から順次新しい金額が適用されるため、特に最低賃金の引上げ前に申請する場合は、申請時点だけでなく、雇用開始後に適用される最低賃金額も確認してください。2026年度も、地域別最低賃金は10月1日から12月2日までの間に順次発効する予定です。

※技能実習2号修了者は概ね3年、3号修了者は概ね5年の経験者として取り扱い、技能実習時の報酬を上回ることはもちろん、同等経験の日本人技能者の賃金水準と比較して不当に低くならないよう設定してください。

5. 給与控除項目(別紙「賃金の支払」)の明記と適正性
食費や社宅・寮などの居住費、水道光熱費を給与から定期的に控除する場合は、名目および金額を雇用条件書(参考様式第1-6号別紙)に確実に明記し、本人の合意を得る必要があります。控除する居住費などは「実費相当額の原則」が適用され、高額すぎる場合は不当な利益取得とみなされ追加の立証資料を求められます。

6. 一時帰国のための有給休暇取得への配慮
外国人が一時帰国を希望した場合は、業務上やむを得ない事情がある場合を除き、必要な有給休暇(または無給休暇)を取得できるよう雇用契約上明記・配慮する必要があります。

7. 帰国旅費の負担と違約金・保証金契約の厳禁
契約終了後に外国人が自力で帰国旅費を負担できないときは、受入れ機関(企業)が旅費を負担し円滑な出国を確保する旨を定める必要があります。また、契約不履行に対する違約金の設定、保証金の徴収、退職時の貸付金一括返済契約など、不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約は固く禁止されています。

【STEP別】雇用条件書(参考様式第1-6号)の具体的な記入手順

ここからは、出入国在留管理庁の運用要領に基づき、雇用条件書(参考様式第1-6号・別紙「賃金の支払」含む)の具体的な記入ステップを順番に解説します。

STEP 1:契約期間・就業場所・従事業務の記入

まずは雇用契約の土台となる基本項目を正しく記入します。

  • 契約期間:雇用契約の開始日および終了日を記載します。更新の有無、および更新の判断基準(勤務成績、能力、契約満了時の業務量、特定技能1号の通算在留期間上限5年など)を記入します。なお、認定申請・変更申請の場合(更新申請を除く)は、申請時点で予定している雇用開始日・終了日を記載します。在留資格の審査や入国・就労開始時期によって実際の雇用開始日等が予定からずれることがありますが、参考様式第1-5号にも、実際の入国月・就労月や雇用開始日に伴って雇用契約期間が変更される旨が定められています。したがって、申請時に記載した予定期間と実際の期間が一致しなかったことだけをもって問題となるものではありません。
  • 就業の場所:外国人が実際に常時勤務する事業所・工場・店舗等の名称および所在地を正確に記入します。
    ※ビルクリーニング業やリネンサプライ業、介護分野など、事業所登録や衛生基準認定、事業所枠が関係する分野では、認定・登録を受けた事業所と一致させる必要があります。
  • 従事すべき業務の内容:分野別の運用要領で認められた「主たる業務区分」および付随する関連業務を具体的に記載します。清掃や片付けなどの関連業務のみに従事させる記載は不許可の対象となります。

STEP 2:労働時間・休日・休暇の記入

労働基準法および特定技能の制度基準に合致しているか確認しながら記入します。

  • 所定労働時間および就業時間:始業・終業時刻、休憩時間を明記します。シフト制や交代制の場合は代表的な勤務パターンを記入してください。
    原則として「労働日数が週5日以上かつ年間217日以上」かつ「週労働時間が30時間以上」のフルタイム要件を満たしているか必ずチェックします。
    ※1年単位の変形労働時間制を採用する場合は、労働基準監督署届出済みの協定書写しおよび外国人理解言語併記の「年間カレンダー」の添付が必須です。
  • 休日・休暇:定例日(曜日等)や年間合計休日日数を明記します。年次有給休暇は労働基準法に基づき付与する日数を記載します。
  • 一時帰国休暇の取得配慮:本人が一時帰国を希望した際、事業の適正な運営を妨げる場合等やむを得ない事情がある場合を除き、有給または無給の休暇を取得できるよう配慮する旨を特記します。

STEP 3:賃金の記入(別紙「賃金の支払」)

賃金条件は入管審査で重要な確認項目の一つです。

    • 基本賃金:支給形態(月給・日給・時間給)を選択の上、支給額を記入します。同じ職務・責任を担う日本人社員と同等額以上を設定してください。前述の通り、技能実習2号修了者は概ね3年、3号修了者は概ね5年の経験者として取り扱う必要があります。また、月給制・日給制の場合でも、時給換算した金額が適用される最低賃金額を下回らないことを確認してください。
    • 最低賃金の改定に注意:地域別最低賃金は毎年改定され、10月頃から都道府県ごとに順次新しい金額が適用されます。最低賃金の引上げ前に申請する場合でも、雇用開始日が改定後となるケースでは、改定後の最低賃金額を下回らないように基本賃金を設定する必要があります。申請時点の最低賃金だけを確認して終わりにせず、実際の雇用開始日と、その時点で適用される最低賃金額を確認しましょう。
    • 諸手当:家族手当、住宅手当、通勤手当、役職手当など、支給する手当の名称、支給額、計算条件を明確に指定します。
    • 割増賃金率:労働基準法で定められた最低ラインを確認して記載します。法定労働時間を超える時間外労働は25%以上、法定休日労働は35%以上、深夜労働(22時~翌5時)は25%以上の割増率が必要です。また、1か月60時間を超える時間外労働については50%以上の割増率が必要です。時間外労働と深夜労働が重なる場合は50%以上、法定休日労働と深夜労働が重なる場合は60%以上となります。
    • 昇給・賞与・退職金:各項目の「有・無」を選択します。特定技能1号(最長5年)の期間中の技能習熟や能力評価に応じた昇給の見込み・基準をあらかじめ明記しておくことが求められます。

    STEP 4:給与控除項目・支払方法・署名

    手取り額に直結する控除項目と、最後の合意手続きです。

    • 控除項目(別紙「賃金の支払」):食費、社宅費・寮費(居住費)、水道光熱費などを給与から定期的に控除する場合は、名目と具体的な金額(または算出根拠)を確実に明記します。
      控除する居住費等は実際の費用に相当する適正な額(実費相当額)でなければならず、高額すぎる場合は追加の立証資料を求められることがあります。
    • 賃金支払方法:預貯金口座への振込み(または指定されたデジタル払い)により支払う旨を明記し、外国人本人の同意を得ていることを確認します。
    • 署名・押印:雇用の条件について外国人本人へ十分な説明を行い、理解・合意したことの確認として、本人が署名します。また、特定技能雇用契約書(参考様式第1-5号)および雇用条件書(参考様式第1-6号)には、受入れ機関による押印が必要です。両方の書類について、押印の漏れがないか最終確認しましょう。

実務でよくある不備・補正指示の事例と対策

当行政書士法人に寄せられるご相談の中でも、自社で書類を作成された企業様によく見られる不備パターンをご紹介します。

不備の発生パターン リスク・入管からの指摘内容 正しい実務対策
母国語訳がない、または署名がPC代筆になっている 本人の理解不足と判定され、書類の全再作成・再提出指示。 多言語様式を使用し、署名欄には手書きで自筆署名させる。
社宅費(居住費)として相場より高い金額を控除している 不当な利益取得(実費相当額の原則違反)として賃金から不当控除とみなされる。 賃貸物件の家賃・共益費を入居人数で除した実費以下の金額を設定し、算出根拠資料を添付する。
技能実習生からの変更時に賃金が上がっていない 同等経験の日本人比較および経験考慮が不十分として不許可・補正指示。 3年〜5年の経験者として評価し、技能実習時の支給額を上回る基本給を設定する。

まとめ:正確な雇用契約の作成がコンプライアンスの第一歩

特定技能外国人の受入れにおいて、雇用契約書および雇用条件書の作成はすべての手続きの原点です。単に書類の形を整えるだけでなく、労働関係法令や特定技能制度特有の運用要領を正しく理解し、外国人本人が安心して働ける環境を整えることがコンプライアンス遵守に繋がります。


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