【特定技能】自社支援のやり方完全マニュアル!受入要件と必要書類・実務フロー

深刻な人手不足の解消として、多くの企業が導入を進める在留資格「特定技能」。しかし、特定技能1号の外国人を受け入れるには、義務化されている「職業生活上、日常生活上、又は社会生活上の支援」を適正に実施しなければなりません。

この支援を登録支援機関にすべて委託する企業も多いですが、近年では「委託コストを抑えたい」「自社でしっかりと人材を育成・管理したい」という理由から、自社ですべての支援を行う「自社支援」に切り替える、あるいは最初から自社支援でスタートする企業が急増しています。

本記事では、企業の外国人雇用担当者向けに、特定技能の自社支援を行うための要件、メリット・デメリット、具体的な進め方、そして実務で挫折しないためのポイントを網羅的かつ分かりやすく徹底解説します!

目次

特定技能の「自社支援」とは?制度の基本概要

特定技能1号外国人を雇用する受入れ企業(特定技能所属機関)には、国が定めた10項目の義務的支援を行う義務があります。この支援の実施方法には大きく分けて2つのパターンがあります。

  • 委託支援:登録支援機関に支援計画の全部の実施を委託する
  • 自社支援:受入れ企業が自社のリソース(役職員)で支援計画をすべて実施する

自社支援とは、外部の機関を頼らずに、社内の人間だけで「事前ガイダンス」から「出入国時の送迎」「定期的な面談・届出」までを完結させる運用体制を指します。国(出入国在留管理庁)が定める厳しい要件をクリアすれば、どの企業でも自社支援を行うことが可能です。

⚠️ 注意:支援の「一部委託」に関する罠

自社支援を行う企業が、通訳や送迎の一部を他社に手伝ってもらう「一部委託」は認められています。ただし、主要な支援項目や「定期的な面談の実施・行政機関への通報」を第三者に丸投げすることはできません。全部を丸投げする場合は「登録支援機関への委託」扱いとなります。

受入れ企業が自社支援を行うための「2つのルート」と要件

特定技能所属機関(受入れ企業)が自社支援を行うためには、法務省令(特定技能基準省令)で定める「適正な支援を実施できる体制」の基準をクリアし、地方出入国在留管理局の審査をパスする必要があります。

具体的には、以下の「ルート①」または「ルート②」のいずれかに該当していなければなりません。

区分 主な要件(実績) 選任が必要な人員
ルート①
(受入れ実績)
過去2年間に就労資格(技術・人文知識・国際業務、特定技能1号・2号など)を持つ中長期在留者の受入れ・管理を「適正」に行った実績があること。 支援責任者 1名以上
支援担当者 事業所ごとに1名以上
(兼任も可能です)
ルート②
(生活相談実績)
過去2年間に中長期在留者の「生活相談業務」に従事した経験がある役職員を社内から選任できること。
※ボランティアではなく業務としての実績が必要です。

なお、上記のどちらにも該当しない場合でも、「これらと同程度に支援業務を適正に実施できる」と地方出入国在留管理局長が認めた場合(過去に日本人労働者を適正に雇用し、是正勧告を受けていないなど、一定の基準を満たす場合)は認められるケース(ルート③)もあります。

重要な人員配置:支援責任者と支援担当者

自社支援を行うにあたり、社内から必ず「支援責任者」「支援担当者」を選任しなければなりません。

  • 支援責任者:支援計画の作成や進捗管理、届出事務などを統括する責任者。
  • 支援担当者:実際に外国人のもとに足を運び、面談や手続きの補助を直接行う担当者。

💡 「支援の中立性」に関する絶対ルール

支援責任者および支援担当者は、「外国人を直接監督する立場(職長や直属の上司、代表取締役など)にない者」でなければなりません。外国人労働者と会社(上司)の間でトラブルや労働不払いなどの問題が起きた際に、中立な立場で相談に乗る必要があるためです。そのため、人事部や総務部のスタッフ、あるいは縦のラインから外れた別部署の常勤職員を選任するのが一般的です。

言語サポート(通訳)の体制

義務的支援のうち、「事前ガイダンス」「生活オリエンテーション」「相談・苦情への対応」「定期的な面談」の4項目は、「外国人が十分に理解することができる言語(原則として母国語、または深く理解できる言語)」で実施する必要があります。

社内に通訳ができる常勤スタッフがいなくても、必要なときだけ外部の通訳(履行補助者)をスポットで手配できれば要件を満たすことができます。込み入った相談の際には、翻訳アプリだけでなく通訳人を介在させることが運用の基本となります。

特定技能を自社支援で運用する3つのメリット

企業が自社支援を選択する背景には、単なるコスト削減に留まらない大きなメリットがあります。

1. 外部委託費(月額サポート費用)の大幅な削減

最大のメリットはコスト面です。登録支援機関に支援を委託する場合、外国人1人あたり月額2万円〜3万円程度の委託管理費が発生するのが相場です。5人の外国人を雇用すれば、年間で120万円〜180万円の固定費が外部に流出することになります。自社支援に切り替えることで、このランニングコストを完全にゼロにできます。

2. 社内コミュニケーションの活性化と定着率の向上

外部の支援機関を挟まないため、外国人からの相談やSOSが直接自社の総務・人事(支援担当者)に届くようになります。企業が直接親身になって生活をサポートすることで、外国人労働者との間に強い信頼関係(エンゲージメント)が生まれ、結果として他社への転職や失踪を防ぎ、定着率が大幅に向上します。

3. 自社内に外国人雇用のノウハウが蓄積される

自社でビザ申請(在留資格の変更・更新)や支援、行政への届出を行うことで、社内に外国人雇用の法務ノウハウが蓄積されます。今後、特定技能外国人の増員や、他の在留資格での採用を拡大する際にも、他社に依存しない強い組織基盤を作ることができます。

【さらにコスト削減】ビザの「自社申請」で行政書士費用もカット

自社支援を行えるだけの体制(書類管理や法務ノウハウ)が整うと、登録支援機関への委託費だけでなく、行政書士に依頼していたビザ申請(在留資格の変更・更新手続き)費用もすべて自社で内製化(0円に)することが可能になります。

特定技能のビザ申請を行政書士へ外注すると、新規申請で10万円〜15万円、年1〜2回発生する在留期間更新でも5万円〜10万円程度の報酬費用が「外国人1人あたり」にかかります。自社支援の構築と合わせて、ビザの各種手続きも社内で行う「自社申請」を取り入れることで、雇用維持に関わるコストを最小限まで抑え込むことができます。

知っておくべき自社支援のデメリットとリスク

一方で、自社支援には相応の覚悟とリソースが必要です。「思っていたより大変だった」と後悔しないよう、デメリットも把握しておきましょう。

1. 社内担当者(総務・人事)の業務負担が増加する

特定技能の法務手続きや支援は、非常に緻密で膨大です。後述する「定期届出(年 1 回)」や、生活オリエンテーション(最低8時間以上推奨)などの時間を確保する必要があり、社内担当者の通常業務が圧迫されるリスクがあります。

2. 夜間や休日、緊急時のトラブル対応が必要になる

外国人労働者がプライベートで事故に遭った、急病で夜間に救急搬送された、近隣住民とゴミ出しのルールでトラブルになったといった場合、自社の支援担当者が休日や夜間であっても対応しなければなりません。基本的にいつでも連絡が取れる体制(緊急連絡網)の構築が必要です。

3. 法令違反(書類の不備・出し忘れ)による罰則・ペナルティ

出入国管理法(入管法)や省令に定められた期限通りに届出を行わなかったり、支援を怠ったりした場合、「改善命令」の対象となります。さらに悪質な場合は、特定技能外国人の受入れが今後5年間停止される(欠格事由への該当)という、経営上甚大なペナルティを科されるリスクがあります。

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自社支援の担当者が行うべき具体的な実務フロー

自社支援を行うにあたり、担当者がどのようなタイミングで何をすべきか、実務の流れを解説します。

【ステップ1】雇用契約締結前:事前ガイダンスの実施

在留資格の変更申請(または認定証明書交付申請)を行う前に、外国人本人に対して労働条件や入国手続き、保証金徴収の禁止などについて、十分に理解できる言語で説明を行います。目安として3時間程度、しっかりと時間をかけて行うことが運用要領で求められています。

【ステップ2】入国・変更直後:生活オリエンテーションと各種手続き

外国人が日本での生活(あるいは新しい就労先での生活)を円滑に始められるよう、日本のマナー、交通ルール、銀行口座の開設方法、税金や社会保険の仕組みなどを教えます。個別の事情によりますが、十分に理解させるためには少なくとも8時間以上(生活環境に変化がない場合でも4時間以上)行う必要があります。

また、市区町村役場への住居地登録や、マイナンバー手続き、銀行口座開設などへ必要に応じて同行し、手続きをサポートします。

【ステップ3】就労期間中:定期的な面談の実施(3か月に1回以上)

自社支援の要とも言えるのが、3か月に1回以上実施する「定期面談」です。支援責任者または支援担当者が、「外国人本人」と「その上司(監督する立場にある者)」のそれぞれ別々に面談を行います。

面談では、サービス残業が発生していないか、いじめやハラスメントがないか、生活で困っていることはないかをヒアリングし、必ず「定期面談報告書」を作成して社内に保管します。もし労働基準法違反や入管法違反(パスポートの取上げなど)の事実を知った場合は、関係行政機関に通報する義務があります。

【ステップ4】継続的なサポート:10項目の義務的支援

これら以外にも、「日本語学習の機会の提供」「日本人との交流促進」「転職支援(会社の都合で雇用契約を解除する場合)」など、多岐にわたる義務的支援を日常的に継続して提供します。

自社支援企業を悩ませる「2つの届出事務」と注意点

自社支援を行う企業が最もつまずきやすいのが、入管庁への「届出(報告)事務」です。これらを忘れると改善命令などのペナルティを受ける可能性があるため、担当者はスケジュールを完全に管理する必要があります。

1. 年1回の「定期届出」

特定技能所属機関は、毎年「5月31日まで」に、その年の前年4月1日から3月31日までの期間における特定技能外国人の受入れ状況、活動状況、支援の実施状況について、管轄の地方出入国在留管理局に書類(または電子届出システム)を提出しなければなりません。賃金台帳のコピーや、各種公的義務(税金・社会保険)の納付証明書などの「適格性書類」の添付が必要です。

2. トラブル・変更時の「随時届出」

以下のような事由(ライフイベントや契約変更など)が発生した場合、事由が生じた日から「14日以内」に届出を行う義務があります。

  • 特定技能雇用契約を変更・終了・新契約締結したとき
  • 支援計画を変更したとき(支援担当者の変更など含む)
  • 登録支援機関との委託契約を締結・変更・終了したとき
  • 外国人の受入れが困難になったとき(失踪、会社の経営悪化による解雇、1か月以上の長期休業など)
  • 自社が基準不適合になったと知ったとき(税金の滞納など)

特に、外国人が失踪(行方不明)になった場合や、産休・育休・私傷病で1か月以上就労できない期間が生じた場合は、即座に「受入れ困難時の届出」を提出しなければならないため注意してください。

地方公共団体が実施する「共生施策」の確認と計画書への記入

特定技能所属機関は、1号特定技能外国人支援計画の作成・実施に当たっては、外国人が活動する事業所の所在地、および住居地が属する地方公共団体(市区町村)が実施する「共生施策」を確認し、それを踏まえた支援内容を計画書に記入する必要があります。

共生施策の具体例:
市区町村が提供する各種行政サービス、多言語の交通・ゴミ出しルール、医療・公衆衛生や防災訓練、地域の日本語教室や国際交流イベントなど。
※明らかな観光客向けの案内などは対象外となります。

実務としては、自治体のホームページを閲覧して確認し、確認した「市区町村名」「確認日」「確認方法」を支援計画書に明記します。もし事業所の所在地と住居地の自治体が異なる場合は、双方の施策を確認しなければなりません。また、初めて在留諸申請を行う前(または既存の外国人の更新前)には、該当する市区町村に対して「協力確認書」を一度提出する義務があることも覚えておきましょう。

自社支援を成功させるための実務のチェックリスト

自社支援をスムーズに機能させ、法令違反リスクをヘッジするための重要なポイントをまとめました。

  • 書類の保存期間:活動内容に係る文書(管理簿、賃金台帳、出勤簿など)や支援状況に係る文書(事前ガイダンス確認書、生活オリエンテーション確認書、相談記録書、定期面談報告書など)は、特定技能雇用契約が終了した日から「1年以上」、事業所に備え置いて保管しなければなりません(電磁的記録での保管も可能)。
  • 費用の本人負担は一切禁止:事前ガイダンスや生活オリエンテーション、面談の際に発生した通訳費用や送迎の交通費など、義務的支援に要した実費を直接・間接を問わず外国人に負担させることは法律で一切禁止されています(家賃や水道光熱費の実費相当額の徴収は、適正な額で合意があれば可能です)。
  • クラウド管理システムの導入を検討する:「書類の期限管理が漏れそう」「毎回エクセルや手書きで報告書を作るのが大変」という場合は、外国人雇用管理に特化したクラウドシステム(noborderなど)を活用することで、アラート機能や書類の自動生成機能により、担当者の業務負担を10分の1以下に削減できます。

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