【企業人事向け】外国人社員の駆け込み永住許可申請マニュアル|セルフチェック・独立生計・素行要件を徹底解説
この記事でわかること
- 出入国在留管理庁公表の「永住許可申請セルフチェックシート」全3パターン
- 手数料値上げ発表に伴う「駆け込み永住申請」の現状と不許可リスク
- 最重要:5年以上の就労資格にカウントされない在留資格(特定技能1号・技能実習・留学等)
- 就労資格と配偶者ビザ等で異なる「独立生計要件(年収・扶養)」の徹底比較
- 交通違反・オーバーワーク・税金や社会保険の「納期遅れ」に関する素行善良・国益適合要件
出入国在留管理庁による在留申請手数料の引き上げ方針が発表されたことを受け、「手数料が値上がりする前に永住申請を出したい」「要件を満たしているか確認してほしい」という相談が急増しています。
永住許可(永住ビザ)を取得すると、外国人社員にとっては在留期間の更新手続きが不要になり、職種の制限もなくなります。企業側にとっても、ビザの期限切れによる離職リスクがなくなり、中長期的なキャリア形成や幹部候補としての登用が可能になるなど、双方に非常に大きなメリットがあります。
しかし、永住審査は他の就労ビザ(「技術・人文知識・国際業務」など)の更新や変更審査に比べて格段に審査が厳しく、準備不足のまま駆け込みで申請すると「不許可」となる可能性が極めて高くなります。企業の人事・労務担当者様としては、社員からの打診に対して事前に社内で一次チェックを行い、適切なアドバイスとサポートを提供する体制を整えることが求められます。
本記事では、まず出入国在留管理庁が公表している「永住許可申請セルフチェックシート」を提示し、その後に各確認項目の詳細や実務上の注意点を分かりやすく解説します。
目次
Toggle【出入国在留管理庁様式】永住許可申請セルフチェックシート
出入国在留管理庁では、永住許可の基本要件を満たしているかを事前に確認するための「セルフチェックシート」を公表しています。外国人社員の現在の在留資格(ビザ)の区分に応じて、まずは以下のチェックシートで「はい」「いいえ」を確認してください。
1. 就労関係の在留資格(技術・人文知識・国際業務、技能、高度専門職等)の方
| 確認項目(質問) | はい(Yes) | いいえ(No) |
|---|---|---|
| 1. 日本に引き続き10年以上在留しており、かつ、就労資格(「技術・人文知識・国際業務」等)又は居住資格(「日本人の配偶者等」等)で引き続き5年以上在留している。 ※高度外国人材として70点以上有して3年以上、または80点以上(特別高度人材含む)有して1年以上継続在留している場合も「はい」 |
□ | □ |
| 2. 直近5年間、住民税を適正な時期(納期限内)に納税している。 ※未納や当初の納税期限を超えて納税したことがある場合は「いいえ」 ※高度70点は直近3年間、高度80点・特別高度人材は直近1年間で回答 |
□ | □ |
| 3. 国税(源泉所得税及び復興特別所得税、申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税、相続税、贈与税)の未納がない。 | □ | □ |
| 4. 直近2年間、年金保険料(国民年金及び厚生年金)を適正な時期(納期限内)に納付している。 ※未納や当初の納付期限を超えて納付したことがある場合は「いいえ」 ※高度80点・特別高度人材は直近1年間で回答 |
□ | □ |
| 5. 直近2年間、医療保険料(健康保険、国民健康保険及び後期高齢者医療保険)を適正な時期(納期限内)に納付している。 ※未納や当初の納付期限を超えて納付したことがある場合は「いいえ」 ※高度80点・特別高度人材は直近1年間で回答 |
□ | □ |
| 6. 現在の在留資格について、在留期間「3年」又は「5年」が決定されている。 | □ | □ |
| 7. 過去に、日本の法令に違反して罰金刑・懲役刑・禁錮刑を受けたことがない。 | □ | □ |
2. 「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の在留資格の方
| 確認項目(質問) | はい(Yes) | いいえ(No) |
|---|---|---|
| 1. 日本人、永住者又は特別永住者の配偶者である場合:実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ日本に引き続き1年以上在留している。(実子・特別養子の場合は日本に引き続き1年以上在留している) | □ | □ |
| 2. 直近3年間(実子等の場合は直近1年間)、住民税を適正な時期(納期限内)に納税している。 ※未納や当初の納税期限を超えて納税したことがある場合は「いいえ」 ※扶養を受けている場合は、扶養者の納税状況を回答 |
□ | □ |
| 3. 国税(源泉所得税及び復興特別所得税、申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税、相続税、贈与税)の未納がない。 | □ | □ |
| 4. 直近2年間(実子等の場合は直近1年間)、年金保険料(国民年金及び厚生年金)を適正な時期(納期限内)に納付している。 ※未納や当初の納付期限を超えて納付したことがある場合は「いいえ」 ※扶養を受けている場合は、扶養者の納付状況を回答 |
□ | □ |
| 5. 直近2年間(実子等の場合は直近1年間)、医療保険料(健康保険、国民健康保険及び後期高齢者医療保険)を適正な時期(納期限内)に納付している。 ※未納や当初の納付期限を超えて納付したことがある場合は「いいえ」 ※扶養を受けている場合は、扶養者の納付状況を回答 |
□ | □ |
| 6. 現在の在留資格について、在留期間「3年」又は「5年」が決定されている。 | □ | □ |
| 7. 過去に、日本の法令に違反して罰金刑・懲役刑・禁錮刑を受けたことがない。 | □ | □ |
3. 在留資格「定住者」の方
| 確認項目(質問) | はい(Yes) | いいえ(No) |
|---|---|---|
| 1. 「定住者」の在留資格で5年以上継続して日本に在留している。 ※「定住者」で5年以上在留していない場合でも、日本に引き続き10年以上在留し、就労資格(「技術・人文知識・国際業務」等)又は居住資格で引き続き5年以上在留しているときは「はい」 |
□ | □ |
| 2. 直近5年間、住民税を適正な時期(納期限内)に納税している。 ※未納や当初の納税期限を超えて納税したことがある場合は「いいえ」 |
□ | □ |
| 3. 国税(源泉所得税及び復興特別所得税、申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税、相続税、贈与税)の未納がない。 | □ | □ |
| 4. 直近2年間、年金保険料(国民年金及び厚生年金)を適正な時期(納期限内)に納付している。 ※未納や当初の納付期限を超えて納付したことがある場合は「いいえ」 |
□ | □ |
| 5. 直近2年間、医療保険料(健康保険、国民健康保険及び後期高齢者医療保険)を適正な時期(納期限内)に納付している。 ※未納や当初の納付期限を超えて納付したことがある場合は「いいえ」 |
□ | □ |
| 6. 現在の在留資格について、在留期間「3年」又は「5年」が決定されている。 | □ | □ |
| 7. 過去に、日本の法令に違反して罰金刑・懲役刑・禁錮刑を受けたことがない。 | □ | □ |
🔗 入管HP
手数料引き上げによる「駆け込み申請」の現状と不許可リスク
入管の手数料改定(値上げ)発表に伴い、全国の地方出入国在留管理局では永住許可申請が殺到しています。永住申請の標準処理期間は本来4ヶ月程度とされていますが、駆け込み申請の急増もあり、審査期間が8ヶ月〜1年以上長期化するケースが常態化しています。
焦って不十分な内容で申請を出すと、審査途中で大量の追加資料提出を求められたり、最終的に「不許可」という結果になったりします。永住申請で一度不許可になると、その不許可理由(納期遅れや年収不足など)が解消されるまで再申請が難しくなるため、社内で事前に要件を満たしているか冷静に見極めることが重要です。
永住の「10年ルール」が緩和されるケースとは?
通常、永住申請には原則として10年間の日本在留(うち就労資格または居住資格で5年以上)が必要ですが、特定の条件を満たせばこの居住期間要件が大幅に短縮(緩和)されます。優秀な社員や該当する社員がいる場合は、以下の条件をチェックしてください。
1. 高度専門職ポイントによる緩和(最短1年)
学歴、職歴、年収などで計算される「高度専門職ポイント」を利用します。
- 80ポイント以上:高度専門職ポイント計算で80点以上を有し、引き続き1年以上日本に在留していれば申請可能
- 70ポイント以上:高度専門職ポイント計算で70点以上を有し、引き続き3年以上日本に在留していれば申請可能
2. 日本人・永住者の配偶者の場合(最短3年)
日本人、永住者、または特別永住者と結婚している場合、実態を伴う結婚生活が3年以上継続し、かつ日本に引き続き1年以上在留していれば申請可能です。(※対象が実子や特別養子の場合は、日本に引き続き1年以上在留していれば対象となります。)
3. 定住者の場合(最短5年)
在留資格が「定住者」である場合、継続して5年以上日本に在留していれば、永住申請の要件を満たすことができます。
居住要件の詳細と「就労5年」にカウントされない注意点
セルフチェックシートの項目1にある「居住要件」は、単に日本に長く住んでいればよいわけではありません。
「引き続き」在留しているかの判断基準
「引き続き」とは、在留資格が途切れることなく連続して日本に住んでいることを意味します。以下のような長期出国がある場合は、通算の滞在年数がゼロリセットされる可能性が高いため注意してください。
- 1回の出国で連続して約3ヶ月(90日)以上日本を離れた場合
- 1年間で通算して約100日以上日本を離れた場合(海外出張、里帰り出産などを含む)
【重要】5年以上の就労資格にカウント「されない」在留資格
社内チェックで最もミスが起きやすいのが、「就労資格で5年以上」の計算です。日本に10年以上滞在していても、所持していたビザの種類によっては就労期間として一切カウントされません。
| 在留資格の区分 | 5年就労へのカウント | 理由・実務上の解釈 |
|---|---|---|
| 特定技能1号 | × カウント不可 | 「相当程度の知識・経験を要する技能」の段階であり、制度上も通算上限(原則5年)が定められた過渡的資格であるため。 |
| 技能実習(1号・2号・3号) | × カウント不可 | 技能移転による国際貢献を目的とした人材育成制度であり、実務上の就労資格とみなされないため。 |
| 留学 / 家族滞在 / 特定活動 | × カウント不可 | 学業や親族同居等を目的とする資格であるため(資格外活動許可でアルバイトをしていても就労履歴には含まれません)。 |
| 技術・人文知識・国際業務 技能、企業内転勤 など |
○ カウント可能 | 専門的・技術的分野の就労ビザであり、正規の就労履歴として全期間がカウントされます。 |
| 特定技能2号 | ○ カウント可能 | 「熟練した技能」を有する資格であり、一般の就労ビザと同等に就労期間としてカウントされます。 |
【具体例】「技能実習で3年、特定技能1号で3年、技術・人文知識・国際業務で2年(計8年)」在留している社員の場合、就労資格としてカウントできるのは「技人国」の2年のみです。総滞在10年・就労5年のいずれも満たしていないため、申請を出しても確実に不許可となります。
独立生計要件の詳細:就労資格と配偶者ビザ等での違い
独立生計要件とは、「日常生活において公共の負担(生活保護等)にならず、自立した安定的な生活を営むことができる資産や技能を有していること」です。実務上は「年収(総支給額)」と「扶養人数」で判断されますが、所持している在留資格によって審査対象となる期間や考え方が異なります。
1. 就労関係の在留資格(技術・人文知識・国際業務等)の場合
就労ビザで在留している外国人社員自身に、定用的で安定した収入があるかが厳しくチェックされます。
- 審査対象期間:直近5年間(※高度専門職70点は直近3年間、80点は直近1年間)の年収が連続して基準を満たしている必要があります。過去5年の途中で年収が下がった年があると不許可リスクが高まります。
- 年収基準の目安:単身者の場合、年収300万円以上がひとつの基準です。
- 扶養人数の影響:扶養家族(配偶者、子ども、本国の両親など)が1人増えるごとに、求められる年収基準はおおむね30万円〜50万円程度加算されます。(例:妻と子ども1人を扶養している場合、目安年収は360万〜400万円程度)
- 世帯年収の扱い:原則として「申請者本人の年収」が審査されます。共働きの配偶者(家族滞在ビザでのパートなど)の収入は合算できないケースが多いため注意が必要です。
2. 「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の場合
身分系のビザの場合、配偶者要件の特例により「申請者本人」に収入がなくても、世帯全体として生活が成り立っていれば問題ありません。
- 審査対象期間:直近3年間(※実子の場合は直近1年間)の年収が審査されます。
- 年収基準の目安:世帯単位で年収300万円程度が目安となります。
- 世帯年収の扱い:日本人または永住者である配偶者(夫・妻)に安定した収入があれば、外国人社員本人の年収が0円(無職・専業主婦/主夫)であっても独立生計要件を満たします。世帯としての収入の安定性が評価されます。
3. 在留資格「定住者」の場合
- 審査対象期間:直近5年間の年収が審査されます。
- 年収基準の目安:就労資格と同様に、直近5年間で毎年300万円以上+扶養人数に応じた加算額が目安となります。世帯主の収入がメインで審査されます。
【落とし穴】過度な「節税目的の扶養入れ」に注意
税金を安く抑えるために本国の親族(両親、兄弟、親戚等)を複数名扶養に入れているケースが多く見られます。しかし、扶養人数が増えると永住審査で求められる年収基準が跳ね上がり、独立生計要件で不許可になります。また、実際に送金証明を出せない不自然な扶養は「素行要件(適正な納税)」の観点からも厳しく追及されます。この場合、税の修正申告(扶養を外し追納する手続き)を行い、一定期間が経過してから申請し直す必要があります。
素行善良要件・国益適合要件の詳細:交通違反から「納期遅れ」まで
セルフチェックシートの項目2〜5・7にある「素行善良要件」と「国益適合要件」は、日本の法律を遵守し、社会的に適切な生活を送っているかを審査するものです。
1. 税金・社会保険料の「納期遅れ(遅延納付)」リスク
審査で最も厳しいのが、住民税・国税・公的年金・医療保険料の納付状況です。入管は単に「未納がないか(支払いが済んでいるか)」だけでなく、「当初の納期限を守って支払ったか」を過去1〜5年にわたって厳密に確認します。
- 住民税:就労資格・定住者は直近5年間、配偶者ビザは直近3年間の納期遵守状況が見られます。給与天引き(特別徴収)であれば納期遅れは発生しませんが、中途採用者の前職退職から入社までの空白期間などで自分納付(普通徴収)をしていた時期がある場合、1日でも納期限を過ぎて支払った領収書があると不許可原因になります。
- 公的年金・医療保険:全ビザ共通で直近2年間(※高度80点等は1年間)、納期限内に支払われているかが審査されます。厚生健康保険・厚生年金ではなく国民年金・国民健康保険に加入していた期間がある場合、コンビニ等で期限後に支払った履歴があると不許可になります。
2. 交通違反・法令違反(素行善良要件)
自動車の運転違反だけでなく、近年強化されている自転車の交通違反にも注意が必要です。
- 軽微な交通違反(自動車・バイク):一時不停止、駐車違反、軽度のスピード違反などは、過去5年で3〜5回程度重なると「素行不良」と判定されます。
- 自転車の交通違反(取り締まり強化):道交法改正により、自転車の「ながらスマホ」「酒気帯び運転」をはじめ、信号無視や一時不停止などの危険行為に対する取り締まりや罰則(青切符・赤切符の適用)が大幅に強化されています。自転車での違反であっても、赤切符交付による罰金刑はもちろん、反則金や警告の履歴・回数によっては素行審査に悪影響を及ぼすため、社内での注意喚起が不可欠です。
- 重大な違反・刑事罰:酒気帯び運転、無免許運転、事故による人傷などは即不許可となります。また、罰金刑を受けた場合は、罰金を納付してから5年間(懲役・禁錮の場合は執行終了から10年間)経過しなければ永住申請ができません。
- 資格外活動許可違反(オーバーワーク):家族滞在ビザや留学生時代に「週28時間」を超えてアルバイトをしていた履歴があると、過去に遡って素行要件違反とみなされ不許可になります。
まとめ:社内チェック体制を整えて確実な永住申請を
在留申請手数料の値上げに伴う駆け込み申請の相談に対しては、社員の気持ちに寄り添いつつも、要件を満たしていない状態での見切り申請を防ぐことが企業担当者様の重要な役割です。
特に「過去の税金・年金の納期限遵守」や「特定技能1号・技能実習期間の誤カウント」は、申請後に修正することが不可能なため、要件を満たすまで時期を待ってから申請した方が結果的に近道となるケースが多々あります。
判断に迷う個別ケースや、複雑な経歴を持つ社員の対応については、申請前に出入国在留管理に詳しい行政書士などの専門家へ相談することをお勧めします。
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