【人事・労務必読】お盆・年末年始に外国人社員が「一時帰国」する際のリスクと対策!みなし再入国と特例期間中の注意点
目次
Toggleはじめに:お盆休み・年末年始の「母国一時帰国」に潜むトラブルと企業のリスク
8月の夏季休暇や年末年始などの長期休暇シーズンを迎えると、母国への一時帰国を希望する外国人社員が増加します。しかし、人事・労務担当者が適切な事前確認や実務上の指導を怠ってしまうと、「休暇明けに社員が日本へ再入国できなくなる(在留資格の失効)」という最悪の労務事故につながるおそれがあります。
特に注意が必要なのが、空港での手続き漏れによる「ビザのうっかり失効」や、在留資格の更新申請中(特例期間中)における海外渡航トラブルです。万が一ビザが失効した場合、日本への帰国が不可能となり、企業側も再雇用や在留資格認定証明書(COE)のゼロからの再取得に膨大な時間とリカバリーコストを費やすことになります。
本記事では、技術・人文知識・国際業務(技人国)や特定技能などの外国人社員を雇用する企業の人事・労務担当者様向けに、渡航前に確認すべき「3つのチェックリスト」と、実際に発生した具体的事例、社内運用管理のポイントを詳しく解説します。
渡航前に必ずチェック!「一時帰国3大確認ポイント」
外国人社員が安全に出国し、連休明けにスムーズに復職できるよう、出国前までに以下の3つのポイントを確実にチェック・指導してください。
みなし再入国許可の正しい指導と空港での落とし穴
中長期在留者が、出国後1年以内に日本に戻って再び同じ在留資格で活動する場合、あらかじめ入国管理局(入管)で再入国許可を受けなくても、空港の出国審査時に手続きを行うことで現在の在留資格を維持したまま一時帰国できる制度を「みなし再入国許可」と呼びます。
現場で最も多発するトラブルが、空港の出国審査場に置かれている「再入国出国用EDカード」の記入ミスです。EDカードの「みなし再入国による出国を希望する」というチェック欄にチェックを入れ忘れて出国してしまうと、出国した瞬間に所有している在留資格が完全に消滅します。一度消滅したビザを海外から復元することは法律上不可能です。
【重要・在留期限の注意点】在留期限の残存期間が1年未満の場合、みなし再入国許可の有効期限は「1年間」ではなく「現在の在留期限まで」となります。渡航期間中に在留期限を迎えてしまわないか、必ず確認させてください。
在留資格の「特例期間(審査中)」における渡航リスクの確認
在留資格の変更や更新許可申請をすでに行い、入管での審査結果を待っている状態(いわゆる「特例期間中」)であっても、在留カードの裏面に「在留資格変更/更新許可申請中」のスタンプ(または裏面印字)があれば、海外渡航自体は法的に可能です。特例期間中は、元の在留期限から最長2ヶ月間、現在の在留資格のまま日本に合法的に滞在・再入国できることとされています。
しかし、審査中の一時帰国には極めて高い実務上のリスクが伴います。渡航中に入管から会社宛てに「資料提出通知書(追加書類の補正指示)」などが届いた際、本人が海外にいて対応が遅れてしまうと、指定された提出期限(通常1〜2週間程度)に間に合わず、申請が不許可となってしまう危険性があるためです。
特例期間(最大2ヶ月)が終了するまでに新カードの受領が完了しないと、日本へ戻ることができなくなります。そのため、「審査中の一時帰国は極力避ける」、あるいはどうしても渡航する場合は「海外滞在時でも即座に連絡が取り合える体制を社内で組む」ことが実務上必須です。
所属機関(会社)への事前届出と緊急連絡先の確保
海外滞在中は、現地での急病・怪我、悪天候や台風による航空便の欠航、テロ・政情不安など、予想外のトラブルで予定通りに帰国できないリスクが常に存在します。
会社に事前連絡がないまま出社予定日を過ぎてしまうと、無断欠勤なのか事件・事故に巻き込まれたのか判別がつきません。会社として事前に「一時帰国届」を提出させ、以下の情報を確実に把握しておく運用を徹底しましょう。
- 本人の海外携帯電話番号、メールアドレス
- 普段利用しているSNSアカウント(WhatsApp、WeChat、LINEなど)
- 現地ご家族や滞在先(実家等)の緊急連絡先
- 往復の航空便の便名とフライトスケジュール(eチケットの写し)
実務で多発!一時帰国で実際に起きた失敗事例
お盆休みや年末年始、夏季休暇などを利用して、外国人社員が母国へ一時帰国するケースは少なくありません。しかし、在留資格の更新・変更手続き中であったり、出国時の手続きを誤ったりすると、「休暇から戻ってくるだけ」のつもりが、予定どおり日本へ戻れなくなることがあります。
ここでは、外国人社員の一時帰国に関連して起こり得る具体的な失敗事例をご紹介します。
失敗事例1:いざ申請を行おうとしたところ一時帰国中であることが発覚し、在留期限切れとなったケース
【状況】
在留期限が迫っていたため、会社側で更新手続きの準備を進めていました。しかし、申請直前になって本人が社内に無断で母国へ一時帰国していることが発覚しました。
【問題となった点】
出入国在留管理庁のオンライン申請システムを利用する場合であっても、申請対象者である本人が日本国外(出国中)に滞在している状態では、更新申請や変更申請を行うことができません。また、在留カードの交付・受け取り時にも本人が日本国内に滞在している必要があります。
【結果】
本人は「期限までに戻れば大丈夫」と考えていましたが、急なフライトの延期などにより在留期限までに日本へ再入国することができませんでした。日本国内での申請手続きが完了しないまま在留期限を迎えてしまったため、在留資格は完全に失効。これまで保有していたビザで再入国することが不可能な状態となりました。
【企業が注意すべきポイント】
在留資格の更新時期を迎えている社員に対しては、申請手続きが完了して新しい在留カードを受領するまでの間、無断での海外渡航を行わないよう厳重に注意喚起しておく必要があります。
失敗事例2:空港での意思疎通がうまくいかず、在留カードに穴をあけられ単純出国となったケース
【状況】
日本で問題なく働いている社員が、休暇を利用して母国へ一時帰国することになりました。本人は「休暇が終わったら日本に戻って復職する」という認識で、みなし再入国許可を利用して出国するつもりでした。
【問題となった点】
空港の出国審査場で受領した再入国出国用EDカードの記入方法や確認の際、出国審査官との日本語・英語での意思疎通がうまくいきませんでした。本人はみなし再入国の希望を正しく伝えられず、誤って「単純出国(二度と日本に戻らない出国)」として手続きが進められてしまいました。
【結果】
みなし再入国ではなく単純出国として処理されたため、その場で所有していた在留カードに無効化の穴(パンチ穴)をあけられてしまいました。本人は穴をあけられた理由や深刻さを理解しないまま出国。休暇明けに日本の空港へ到着した際、在留資格が消滅しているため上陸を拒否され、そのまま母国へ強制送還されることになりました。
【企業が注意すべきポイント】
日本語での日常会話ができる社員であっても、空港の審査場という緊張感のある場面ではパニックになり誤った手続きをしてしまうことがあります。出国前にEDカードの書き方や「在留カードに穴をあけられそうになったら一時帰国である旨をしっかり伝える」という点を事前に指導しておくことが重要です。
失敗事例3:審査中の一時帰国中に追加提出依頼があり、書類が準備できず不許可となったケース
【状況】
在留資格の変更許可申請を行った直後、社員が会社への十分な共有をしないまま母国へ一時帰国しました。その後、入管から会社宛てに、申請内容の補正や追加資料の提出を求める「資料提出通知書」が届きました。
【問題となった点】
入管から求められた追加資料の中に、日本国内の本人の自宅に保管されている原本書類や、本人が日本で発行手続きを行わなければならない書類が含まれていました。提出期限は通知から通常1〜2週間程度と短く設定されています。
【結果】
本人は「すぐに日本へ戻る」と会社へ連絡したものの、急な航空券の手配が難しく、フライトの都合等により追加資料の提出期限までに日本へ戻ることができませんでした。期限内に必要な資料を提出できなかったため、入管から「資料未提出」として申請が不許可とされ、在留手続きが継続できなくなりました。
【企業が注意すべきポイント】
審査中の一時帰国は原則避けるべきですが、やむを得ず帰国させる場合は、「入管から追加資料を求められる可能性がある」ことを前提に、日本国内の書類の保管場所を確認し、海外滞在時でも即座に連絡・対応が取れる体制を整えておく必要があります。
今すぐ使える!社内用「一時帰国案内シート」テンプレート
外国人社員へ渡航前に配布し、セルフチェックを行わせるためのチェックシート文例です。「一時帰国届」とセットでご活用ください。
【社内配布用:一時帰国前セルフチェックシート】
☐ 1. 在留カードの有効期限チェック(Check Expiration Date)
・日本に戻ってくる日より前に在留期限が切れていませんか?
(Is your residence card valid until your return date?)
・ビザ更新中(特例期間中)の場合、緊急連絡先を会社へ提出しましたか?
(If your visa is under renewal, did you submit your emergency contact info to HR?)
☐ 2. 空港での手続き確認(Re-entry Permit at Airport)
・空港の出国審査で、EDカードの「みなし再入国許可による出国を希望する」に必ずチェックを入れてください。在留カードに穴を開けられないよう注意してください。
(Be sure to check “I leave Japan intending to re-enter” on the ED card at the airport. Do not let them punch a hole in your residence card.)
☐ 3. 緊急連絡先・スケジュールの提出(Emergency Contact & Flight Schedule)
・海外滞在中に連絡が取れるメールアドレス、電話番号、SNS(LINE/WhatsApp等)を提出しましたか?
(Have you submitted your overseas contact info, SNS ID, and flight schedule to HR?)
☐ 4. フライト遅延・急病時の連絡フロー確認(Reporting Delays or Illness)
・台風、フライト欠航、病気等で帰国が遅れる場合は、すぐに会社へ連絡してください。
(If your return is delayed due to bad weather, canceled flights, or illness, contact the company immediately.)
まとめ:万全の社内体制で夏期休暇・年末年始を迎えよう
外国人社員が安心して母国へ里帰りし、休暇明けに元気に職場へ復職できる環境を整えることは、企業の法的リスクを回避するだけでなく、社員の定着率やエンゲージメント向上に直接つながります。
お盆休みや年末年始などの長期休暇に入る直前のこの時期に、社内の「一時帰国運用ルール」の点検と外国人社員への事前アナウンスを完了させ、万全の体制で休暇をお迎えください。
「知らなかった」では済まされないリスクから会社を守るために。
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