【事業者・支援者向け】特定技能「漁業分野」完全ガイド:1号・2号の違いから特有ルール、2号移行ステップまで徹底解説

日本の漁業・養殖業現場における人手不足に対応するため、特定技能制度を活用した外国人材の受け入・採用が急速に進んでいます。

しかし、漁業分野は海洋での作業や季節的な繁閑差など特有の現場事情があるため、他分野とは異なる独自ルールが複数存在します。本記事では、外国人雇用を検討中または支援中の事業者・担当者様に向けて、漁業分野の基礎知識から特有の注意点、特定技能1号・2号の違い、そして2号へ移行するための具体的な手順まで徹底解説します。

この記事でわかること

  • 特定技能「漁業分野」における2つの業務区分(漁業・養殖業)の全体像
  • 協議会加入や派遣許可、労働時間など漁業分野特有の5つの重要ルール
  • 特定技能1号と2号の比較(在留期間・家族帯同・求められる技能水準)
  • 特定技能2号へ移行するための3つの要件と具体的な4ステップ

1. 漁業分野における特定技能の全体像(2つの業務区分)

特定技能「漁業分野」は、対象となる作業や現場の特性によって大きく2つの業務区分に分かれています。自社がどちらの区分に該当するかを正確に把握することが受け入れの第一歩です。

業務区分の詳細(漁業と養殖業)

漁業分野で受け入れる特定技能外国人が従事できる主たる業務は、以下の2区分です。

業務区分 対象となる主な業務内容
漁業(漁船漁業) 漁具の製作・補修、水産動植物の探索、漁具・漁労機械の操作、採捕、漁獲物の処理・保蔵、安全衛生の確保など
養殖業 養殖資材の製作・補修・管理、養殖水産動植物の育成管理、収獲(穫)・処理、安全衛生の確保など

技能実習生からの移行試験免除ルート

すでに技能実習生を受け入れている企業の場合、技能実習2号を良好に修了している外国人労働者は、特定技能1号へ移行する際の「技能試験」および「日本語試験」が免除されます。

  • 漁船漁業関連の技能実習2号(かつお一本釣り、延縄、まき網、定置網等)を良好に修了 ➡ 「漁業区分」の試験免除
  • 養殖業関連の技能実習2号(ほたてがい・まがき養殖作業等)を良好に修了 ➡ 「養殖業区分」の試験免除

2. 漁業分野特有の重要ルールと注意点

漁業分野で特定技能外国人を受け入れる場合、他分野にはない独自ルールが複数規定されています。法的な不適合を起こさないよう、以下の5つのポイントを必ず確認しておきましょう。

① 協議会への事前加入義務

受け入れ企業(特定技能所属機関)は、特定技能外国人に関する在留資格認定証明書交付申請や変更許可申請を行う前に、水産省が設置する「漁業分野における特定技能外国人の受入れに関する協議会」の構成員になることが義務付けられています。

また、登録支援機関へ支援の全部を委託する場合であっても、受入れ企業が協議会の構成員となる必要があります。

② 労働者派遣形態(船員派遣含む)の許可

特定技能制度は受入れ企業による「直接雇用」が原則ですが、漁業分野(および農業分野)では、対象魚種や漁法による季節ごつの繁閑差、離島・半島地域の特性に対応するため、例外的に労働者派遣形態(船員派遣を含む)での受け入れが認められています。

ただし、派遣元(特定技能所属機関)になれるのは、地方公共団体や漁協(漁業協同組合)、漁業生産組合などが出資・関与する事業者に限られます。

③ 労働基準法第41条(労働時間・休日規定)の適用配慮

天候や潮の満ち引き、季節に左右される漁業・養殖業は、日本人労働者と同様に労働基準法第41条により労働時間・休憩・休日に関する規定が適用除外となります。

深夜手当に関する注意点

労働時間や休日の規定が適用除外であっても、深夜勤務(22時〜翌5時)における割増賃金(深夜手当)の支払いは適用除外とならず必須です。また、外国人労働者の過重労働防止や健康維持のため、適正な労働時間管理と休憩・休日の設定には配慮が求められます。

④ 長期洋上操業時の「定期面談」の特例対応

1号特定技能外国人に対しては、通常「3か月に1回以上の定期面談」の実施が義務付けられています。しかし、遠洋漁業など3か月以上帰港しない洋上操業を行う場合は、無線や船舶電話による連絡(3か月に1回以上)で面談に代えることが認められています。

この場合、港に帰港したタイミングで、支援担当者が改めて対面での面談を実施します。

⑤ 従事可能な「関連業務」の範囲

主たる業務(漁労作業や養殖作業)のほか、日本人労働者が通常行っている付随的な「関連業務」に短時間従事させることが可能です。

  • 漁業の関連業務例:漁具・漁労機械の点検・補修、船体の清掃、餌・氷・燃油の仕込み、出漁に係る炊事・賄い、自家生産物の加工・販売、港での選別作業など
  • 養殖業の関連業務例:養殖設備の保守・管理、食害防止のための鳥獣駆除・防護ネット張り、自家生産物の加工・販売など

※専ら関連業務のみに従事させることは認められませんので注意してください。

3. 特定技能1号と2号の違い

特定技能2号の対象分野拡大に伴い、漁業分野でも2号での受け入れおよび1号からの移行が可能となりました。1号と2号では、技能水準や在留期間、家族帯同の可否などに大きな違いがあります。

比較項目 特定技能1号 特定技能2号
技能水準・役割 相当程度の知識・経験を必要とする技能
(監督者の指示や包括的指示の下で作業に従事)
熟練した技能
(操業・養殖管理者を補佐し、作業員を指導しながら作業工程を管理)
在留期間 通算で最長5年まで 上限なし(更新により長期就労可能)
家族の帯同 原則不可 要件を満たせば配偶者や子の帯同が可能
受入企業の支援義務 義務的支援(生活・業務・面談等)の実施が必要 支援計画の対象外(自立した在留が可能)
求められる要件 1号漁業技能測定試験 + 日本語N4/JFT-Basic
(または技能実習2号良好修了)
2号漁業技能測定試験 + 日本語N3以上 + 2年以上の実務経験(指導・管理経験)

4. 特定技能2号へ移行するための具体的な方法・ステップ

特定技能1号から2号へステップアップする(または直接2号での在留資格を取得する)ためには、試験合格だけでなく、現場での「指導・管理的な実務経験」を証明することが不可欠です。

2号移行に必要な3つの要件

2号への移行申請時には、以下の3つの要件をすべて満たしている必要があります。

  1. 技能試験の合格:
    「2号漁業技能測定試験(漁業)」または「2号漁業技能測定試験(養殖業)」の合格証明書を取得していること。
  2. 日本語能力試験の合格:
    「日本語能力試験(JLPT)N3以上」などの合格証明書を取得していること。
  3. 2年以上の実務経験(指導・管理経験):
    • 漁業区分:登録漁船において、操業を指揮監督する者(船長・漁労長等)を補佐する者、または他の作業員を指導しながら作業工程を管理する者(現場リーダー・主任等)としての2年以上の実務経験。
    • 養殖業区分:養殖現場において、養殖管理者を補佐する者(養殖場長補佐等)、または作業員を指導しながら作業工程・いけす管理を行う者としての2年以上の実務経験。

2号移行手続きの具体的手順(4ステップ)

1号特定技能外国人を2号へ移行させる際の実務フローは以下の通りです。

STEP 1:現場での実務経験の積み上げ(2年以上)

1号在留期間中に単なる指示受け作業員にとどまらず、後輩作業員への作業指示や安全確認、工程管理、船長・管理者への進捗報告など、リーダー・指導者としての実務経験(通算2年以上)を現場で積み重ねます。

STEP 2:試験(技能2号&日本語N3)の受験・合格

実施機関が実施する「2号漁業技能測定試験」および「日本語能力試験(JLPT N3以上)」を受験し、合格証明書を取得します。

STEP 3:実務経験証明書の発行

特定技能所属機関(受入れ企業)は、対象外国人の求めに応じて、現場での指導・管理的な実績を客観的に証明する書面(実務経験証明書)を作成・発行します。

STEP 4:出入国在留管理局へ在留資格変更許可申請

合格証明書、実務経験証明書、協議会構成員証明書などの申請書類を一式揃え、出入国在留管理局(入管)へ「特定技能1号」から「特定技能2号」への在留資格変更許可申請を行います。

5. まとめ

特定技能「漁業分野」は、協議会への事前加入や労働者派遣の特例、過重労働防止への配慮、洋上操業時の面談特例など、現場の事情に即した独自の制度設計がなされています。

長期的に熟練した水産人材を確保・定着させたい事業者にとって、特定技能2号へのキャリアアップルートを早期に提示し、現場で指導・管理経験(2年以上)を積める環境を整えることが人材獲得と定着の成功の鍵となります。


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