特定技能の事前ガイダンスとは?必須10項目と実施方法をわかりやすく解説

「特定技能外国人を採用することが決まったけれど、入国前(または在留資格の変更前)に行わなければならない『事前ガイダンス』って何をすればいいの?」

企業の外国人雇用担当者様から、このようなご相談をいただくケースが非常に増えています。

特定技能制度において、事前ガイダンスの実施は法律で定められた「義務的支援」です。万が一、内容に漏れがあったり、適切な方法で行われていなかったりすると、在留資格(ビザ)の申請が不許可になるだけでなく、企業側が法令違反としてペナルティを受けるリスクもあります。

本記事では、企業の採用担当者様向けに、特定技能の事前ガイダンスで「絶対に説明すべき10項目」や「適切な実施方法」、さらには「知っておくべき注意点」まで、専門知識を交えて網羅的に分かりやすく解説します。

この記事で分かること(目次)

  • 特定技能の「事前ガイダンス」とは?基本概要をチェック
  • 【義務的支援】事前ガイダンスで説明・確認すべき必須10項目
  • 【任意的支援】あわせて伝えておくと親切な4つの情報
  • 事前ガイダンスを適正に行うための「3つの絶対ルール」
  • 実施にかかる時間の目安は?1時間未満はNGとなる理由
  • 登録支援機関へ全部委託する場合の注意点

特定技能の「事前ガイダンス」とは?基本概要をチェック

特定技能の事前ガイダンスとは、外国人材と特定技能雇用契約を締結したあと、在留資格認定証明書(COE)の交付申請前(日本国内にいる外国人からの変更であれば在留資格変更許可申請前)に実施しなければならない情報提供のことです。

目的は、外国人本人がこれから日本で行う活動内容や労働条件、日本で暮らす上でのルールを事前にしっかりと理解し、納得した上で来日(就労開始)できるようにすることにあります。

労働条件の認識違いや、悪質な仲介業者(ブローカー)による不当な金銭搾取を防ぐため、非常に厳格な基準が設けられています。

【義務的支援】事前ガイダンスで説明・確認すべき必須10項目

事前ガイダンスでは、出入国在留管理庁の運用要領により、必ず提供・確認しなければならない事項が細かく定められています。以下の10項目はすべて「義務的支援」であり、1つでも欠けると適切な支援を行ったとは認められません。

1. 従事させる業務内容・報酬額などの労働条件

雇用条件書に基づき、実際に担当する業務(技能水準が認められた業務区分に属する作業)や、毎月の基本給、各種手当、労働時間、休日などの労働条件を正確に説明します。特に、高所作業や機械の取扱いなど、危険有害業務に従事する可能性がある場合は、そのリスクと安全対策についても丁寧に説明し、理解を得る必要があります。

2. 日本で行うことができる活動の内容

在留資格「特定技能1号」として日本に在留し、認められた特定の産業分野において就労活動を行うことができる旨を説明します。

3. 入国・在留にあたっての手続に関する事項

海外から新しく呼び寄せる場合は、交付された在留資格認定証明書を受け取った後、現地の大使館・領事館で査証(ビザ)申請を行い、交付から3か月以内に入国しなければならない流れを説明します。すでに別の在留資格(技能実習や留学など)で日本国内にいる場合は、在留資格変更許可が降りて新しい在留カードを受け取るまで、新しい就労先で働いてはならないことを徹底して伝えます。

4. 保証金の徴収や違約金契約が締結されていないことの確認

外国人本人、あるいはその配偶者や親族などが、不当な仲介業者等から「失踪防止」などの名目で保証金をとられていないか、また「途中で辞めたら違約金を支払う」といった不当な契約を交わしていないかを確認します。これは将来にわたっても締結させてはならない重要なルールです。

5. 外国の機関(送出機関など)に支払った費用の額と内訳の確認

特定技能の準備にあたり、母国の送出機関や仲介業者に費用を支払っている場合、その金額と内訳を本人が完全に理解し、合意しているかを確認します(支払費用の有無、機関名、日付、金額、内訳をヒアリングします)。

6. 支援に要する費用を本人に負担させないことの説明

事前ガイダンスや生活オリエンテーション、定期的な面談などに必要な通訳費用や、出入国時の送迎費用といった「義務的支援」にかかる費用について、直接・間接を問わず、外国人本人に一切負担させない(企業側が負担する)ことを説明します。

7. 入国港等からの送迎について

外国人が日本に到着する空港や港に企業(または登録支援機関)の担当者が出迎え、事業所(または住居)までの送迎を行うスケジュールや方法を伝えます。

8. 適切な住居の確保に係る支援の内容

社宅を貸与する場合はその広さや家賃、光熱費など、本人が負担すべき具体的な金額を説明します。本人が個人で賃貸契約を結ぶ場合は、物件探しの同行や、保証業者の確保、緊急連絡先を企業が引き受けることなどを伝えます。(なお、特定技能1号の居室の広さは、1人当たり7.5㎡以上が原則です)。

9. 相談や苦情の申出を受ける体制

就労開始後に、仕事や私生活について困ったことがあった際、いつでも相談・苦情を申し出られる窓口(対応曜日、時間、電話番号やメールアドレスなど)があることを説明します。

10. 支援責任者・支援担当者の氏名と連絡先

企業の支援責任者や支援担当者が誰なのか、本人の名前と連絡先を明確に提示します。

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【任意的支援】あわせて伝えておくと親切な4つの情報

法律で定められた義務的項目だけでなく、以下のような「任意的支援」の情報も事前ガイダンス時に提供してあげると、外国人材の不安が和らぎ、就労後のスムーズな定着につながります。

  • 入国時の日本の気候や適した服装: 特に東南アジアなどの温暖な地域から来る場合、日本の四季(特に冬の寒さ)をイメージしにくいため、具体的なアドバイスが喜ばれます。
  • 持参すべき物・持参してはならない物: 日本への持ち込みが禁止されている食品(肉製品など)の注意喚起や、母国から持ってきた方が良い日用品を伝えます。
  • 入国後、当面必要となる金額とその用途: 給与が支払われるまでの約1か月間、生活するために必要な現金(食費など)の目安を伝えます。
  • 企業から支給される物品: 制服や作業着、安全靴などが企業から支給される場合は、事前に伝えておくことで無駄な買い物を防げます。

事前ガイダンスを適正に行うための「3つの絶対ルール」

事前ガイダンスは、単に「書類を郵送して読ませるだけ」では認められません。出入国在留管理庁が定める以下の3つのルールを必ず守って実施する必要があります。

ルール1:対面、またはテレビ電話等で顔を確認して行う

ガイダンスは直接対面するか、インターネットのビデオ通話装置(ZoomやTeamsなど)を使い、お互いの顔を見ながら双方向で会話できる環境で実施しなければなりません。書類の郵送や電子メールの送信だけで済ませることは違反となります。

ルール2:本人が「十分に理解できる言語」で実施する

説明は、外国人本人が内容を余すことなくしっかりと理解できる言語で行う必要があります。必ずしも母国語である必要はありませんが、少しでも理解が曖昧になる場合は、通訳人を介するか、本人が深く理解できる言語に翻訳された資料を用意して進めなければなりません。

ルール3:実施後は「確認書」に本人の署名をもらう

ガイダンスが終了したら、提供した内容について本人がすべて理解したことを確認し、「事前ガイダンスの確認書(参考様式第5-9号)」に本人の直筆署名(サイン)をもらう必要があります。

実施にかかる時間の目安は?1時間未満はNGとなる理由

事前ガイダンスにかける時間について、明確な法的規定(何分以上という直接的な条文)はありませんが、出入国在留管理庁の運用要領には目安が示されています。

個別の事情にもよりますが、義務付けられているすべての事項を外国人にしっかりと理解させるためには、一般的に「3時間程度」行うことが必要と考えられています。

たとえば、技能実習生からそのまま同じ企業で特定技能へ移行する場合など、日本の生活や社内ルールに慣れている外国人であっても、雇用契約の内容や新しい労働条件などを十分に説明しなければなりません。このようなケースでは多少時間が短縮されることは想定されますが、「1時間に満たないような場合」は、事前ガイダンスを適切に行ったとは認められない(不適切と判断される)ため、時間に余裕を持ってスケジュールを組んでください。

登録支援機関へ全部委託する場合の注意点

自社で通訳スタッフを確保したり、3時間のガイダンスの時間を確保したりするのが難しい場合、支援業務の全部を「登録支援機関」に委託することが可能です。

全部委託した場合、企業側は「特定技能外国人支援計画の適正な実施」という基準を満たしているとみなされるため、実務の負担が大幅に軽減されます。

ただし、全部を委託する場合でも以下の点に注意が必要です。

  • 契約内容の事前確認: 委託する登録支援機関が、本人の理解できる言語でのサポート体制を本当に持っているか、実効性のある支援ができるかをしっかりと確認してください。体制が不十分な機関に丸投げすると、企業の受入れ自体が認められない場合があります。
  • 見積りと費用の明示: 登録支援機関は、企業に対して支援にかかる費用の額や内訳を明示する義務があります。トラブルを防ぐためにも、複数の機関から見積りを取り、サポート内容を比較検討することをおすすめします。

特定技能の受入れ手続において、事前ガイダンスは外国人材との信頼関係を築くための第一歩であり、法令遵守の観点からも極めて重要なプロセスです。正しい知識を持ち、適切なスケジュールで進めていきましょう。


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