【人事はどう答える?】外国人社員の「副業解禁」に潜む落とし穴:在留資格(ビザ)違反になるNGパターンと会社が取るべき防衛策

【人事はどう答える?】外国人社員の「副業解禁」に潜む落とし穴:在留資格(ビザ)違反になるNGパターンと会社が取るべき防衛策

近年、多くの企業で「副業解禁」や「多様な働き方の推進」が急速に進められています。日本人社員と同様に、外国人社員から「週末に副業をしてもいいですか?」「個人のスキルを活かして副業を始めたい」と相談を受けるケースも増えているのではないでしょうか。

しかし、外国人社員の副業には、日本人社員にはない「出入国管理及び難民認定法(入管法)」という非常に高いハードルが存在します。「社内ルールで一律OKにしているから」と安易に許可を出してしまうと、気づかないうちに社員が不法就労状態となり、最悪の場合は強制退去、さらには企業側も不法就労助長罪に問われるリスクがあります。

本記事では、外国人雇用に携わる人事・採用担当者向けに、外国人社員の副業で絶対にやってはいけないNGパターンと、会社のリスクを守るための適法な管理方法、さらには知っておくべき最新の「特定技能」制度の動向までを分かりやすく解説します。

知らないと危険!外国人の副業が「一発アウト」になる3つのNGパターン

外国人社員が日本で働くためには、それぞれの活動内容に応じた「在留資格(就労ビザ)」が必要です。本業以外の活動(副業)で収入を得る場合、この在留資格のルールを正しく理解していないと、重大な法令違反を引き起こしてしまいます。まずは、人事が絶対に知っておくべき3つのNGパターンを見ていきましょう。

NGパターン①:在留資格の「範囲外」の業務をしてしまう

最も多いトラブルが、現在持っている就労ビザでは認められていない職種のアルバイトをしてしまうケースです。

例えば、オフィスのデスクワーク(翻訳やITエンジニアなど)を行うための在留資格である「技術・人文知識・国際業務(以下、技人国)」を持つ正社員が、週末に以下のような副業を行うことは資格外活動許可なしでは完全に違法(不法就労)となります。

  • 飲食店でのホール・キッチンスタッフ
  • コンビニや小売店での接客・レジ打ち
  • フードデリバリー(ウーバーイーツなど)の配達員

これらは「現業在留資格の範囲外の活動」とみなされ、事前の許可なく収入を得ると入管法違反となります。

NGパターン②:許可を取らずに「個人事業主」として副業を始める

「クラウドソーシングサイトを使って、在宅でWebデザインやプログラミング、通訳の副業をするなら問題ないだろう」と考える外国人社員は少なくありません。しかし、ここにも大きな落とし穴があります。

副業の内容自体が「技人国」の範囲内(例:ITエンジニアが他社のシステム開発を手伝うなど)であっても、雇用契約ではなく「個人事業主(フリーランス)」として業務委託で請け負う場合、原則として現在の就労ビザだけではカバーできません。なぜなら、就労ビザは特定の契約機関(企業など)との関係を前提に交付されているからです。個人事業主として活動を始める場合も、事前に適切な許可や手続きが必須となります。

NGパターン③:本業の勤務時間を疎かにする(オーバーワーク)

副業に熱中するあまり、本業の勤務時間やパフォーマンスに影響が出るケースです。これは日本人社員でも問題になりますが、外国人社員の場合はさらに深刻です。

副業による過労で本業の欠勤が増えたり、本業の活動実態(勤務実態)が不十分であるとみなされたりした場合、次回のビザ更新時に「活動実態なし」と判断され、更新不許可になるリスクが跳ね上がります。本業が疎かになるような副業は、会社にとっても本人にとっても破滅的な結果を招きかねません。

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実務マニュアル:社員から「副業したい」と言われた際の人事の対応3ステップ

外国人社員から「副業の相談」を受けた際、人事担当者はどのような手順で対応すればよいのでしょうか。トラブルを未然に防群ための実務マニュアルを3つのステップで解説します。

ステップ①:副業の内容(職種・契約形態)を正確にヒアリングする

まずは、社員が予定している副業の具体的な内容を細かくヒアリングしましょう。チェックすべきポイントは以下の通りです。

  • 職種・業務内容: 本業の在留資格(例:技人国など)の範囲内か、範囲外か。
  • 契約形態: 相手方企業との「雇用契約」か、個人事業主としての「業務委託契約」か。
  • 勤務時間・報酬: 本業の妨げにならない範囲(時間・スケジュール)か。

この段階で、副業が現在の在留資格で認められる活動なのかを明確に仕分けることがすべての出発点となります。

ステップ②:必要に応じて「資格外活動許可」の申請を義務付ける

ヒアリングの結果、副業の内容が現在の在留資格の範囲外である場合や、異なる契約形態になる場合は、事前に本人が出入国在留管理局(入管)へ「資格外活動許可」の申請を行い、許可を取得することを鉄則としてください。許可が出る前に副業を開始させてはいけません。

【実務上の超重要注意点:留学生のアルバイトとはルールが違います】
よくある勘違いとして、「留学生のように、週28時間以内ならどこでアルバイトしても大丈夫ですよね?」という質問が人事や外国人社員から寄せられます。しかし、「就労ビザ」を持つ人が取る資格外活動許可は、留学生のような包括的な許可(週28時間以内なら何でもOK)は原則として下りません。
就労ビザ保持者の場合は、副業先の企業や業務内容をあらかじめ個別に指定して申請する「個別許可」が原則です。留学生時代の感覚のまま副業を始めさせないよう、人事がしっかり念押しする必要があります。

ステップ③:国税連携を踏まえ、確定申告の指導を行う

副業が無事にスタートした後も、人事が指導すべき実務があります。それが適切な確定申告と納税の徹底です。

副業による所得(収入から経費を差し引いた額)が年間20万円を超える場合、所得税の確定申告が必要になります。また、20万円以下であっても住民税の申告は必須です。

近年、入国管理局と国税庁のデータ連携(国税連携)が本格化しており、外国人住民の所得や納税状況は入管側で厳格に把握できるようになっています。もし副業で相応の収入があるにもかかわらず、適切な申告と納税を行っていない場合、次回のビザ更新時に「公的義務の不履行」とみなされ、ビザ更新が一発で不許可になるリスクが非常に高まっています。「会社が副業を把握していなかった」では済まされないため、年末調整や確定申告の時期には、外国人社員へ正しい申告を行うよう必ず指導してください。

深掘り解説:人手不足分野における「特定技能」制度の厳格な受入れ・管理ルール

ここまで「技人国」などの一般的な就労ビザを前提に解説してきましたが、深刻な人手不足に対応するために設けられた在留資格「特定技能」を保有する社員の場合は、さらに特有かつ厳格な管理体制が求められます。特定技能外国人を雇用している、あるいは今後の受入れを検討している人事担当者は、以下のルールも網羅しておく必要があります。

「特定技能」における兼業・副業・労働者派遣の原則禁止

多くの特定産業分野において、特定技能外国人は「直接雇用」が原則とされており、日本人と同じような感覚での派遣就労や安易な兼業は認められていません。例えば、以下のような分野では独自の厳格な規制が敷かれています。

  • 介護分野: 1号特定技能外国人は、労働者派遣の対象とすることはできず、直接雇用による受入れのみが認められています。また、利用者の居宅を訪問してサービスを提供する「訪問系サービス」に従事させる場合は、実務経験1年以上など極めて厳しい要件と、事前のキャリアアップ計画作成、ハラスメント防止措置、緊急時連絡体制の整備などが義務付けられています。
  • ビルクリーニング分野: 建築物清掃業などの登録を受けた営業所での直接雇用が必須であり、労働者派遣は全面的に禁止されています。
  • 工業製品製造業分野: 該当する日本標準産業分類(繊維工業、印刷・同関連業、プラスチック製品製造業など)の製造品出荷額等がある事業所での就労が条件であり、こちらも労働者派遣の対象とすることは認められません。
  • 建設分野: 土木、建築、ライフライン・設備などの業務区分がありますが、すべて「直接雇用」のみが対象です。労働者派遣や就業機会確保等の対象とすることは一切認められていません。

受入れ企業に義務付けられる「1号特定技能外国人支援計画」

1号特定技能外国人を受け入れる企業(特定技能所属機関)は、彼らが日本での生活や就労を安定的かつ円滑に行えるよう、職業生活上・日常生活上・社会生活上の支援を定めた「1号特定技能外国人支援計画」を作成・実施する法的義務があります。この支援は多岐にわたり、人事が実務として適切に運用しなければなりません。

支援項目 人事・受入れ担当者が行うべき主な内容
事前ガイダンスの提供 雇用契約締結前または在留資格申請前に、労働条件や保証金徴収の禁止、支援費用を本人に負担させないこと等について、本人が十分に理解できる言語で(対面やテレビ電話等で)3時間程度かけて説明する。
出入国する際の送迎 入国時は上陸する港・飛行場から事業所(または住居)まで送迎し、帰国時は出国の港・飛行場の保安検査場前まで同行して見送る(実費は会社負担)。
住居確保・生活契約支援 賃貸契約の連帯保証人になること、または家賃債務保証業者を確保して緊急連絡先となる。居室面積は1人当たり7.5㎡以上(ルームシェア含む)を確保。銀行口座開設や携帯電話、ライフラインの契約に同行・補助する。
生活オリエンテーション 入国後(または在留資格変更後)遅滞なく、日本の生活ルールやマナー、交通ルール、税金・社会保障の手続き、医療機関の利用方法、防災・防犯について本人が十分に理解できる言語で(原則8時間以上)情報提供を行う。住民票の届出などの公的手続きに必要に応じて同行する。
日本語学習の機会の提供 地域の日本語教室や認定日本語教育機関への入学案内、自主学習のための教材・オンライン講座の情報提供や契約補助等を行う。
相談・苦情への対応 就責時間外(夜間や休日等)も含め、いつでも相談や苦情の申出を受けられる体制(専用窓口やメール等)を整備し、十分に理解できる言語で遅滞なく適切に対応する。必要に応じて関係行政機関を案内し同行する。
定期的な面談の実施 支援責任者または支援担当者が、特定技能外国人およびその直接の上司(監督する立場にある者)それぞれと、3か月に1回以上の頻度で定期的な面談(対面または適切な要件を満たしたオンライン)を実施し、労働法令違反等がないか確認する。

これらの支援にかかる費用(通訳費や送迎交通費など)は、すべて受入れ企業側が負担しなければならず、直接的・間接的を問わず外国人に負担させることは厳禁です。自社でのこれら煩雑な支援体制の構築や書類管理が難しい場合は、入管庁の登録を受けた「登録支援機関」に支援計画の全部の実施を委託することも可能ですが、その場合も人事が委託先を適切に監督する目を持つことが求められます。

まとめ

外国人社員の副業管理や在留資格に紐づく各種支援は、単なる社内ルールの問題ではなく、企業のコンプライアンスや優秀な人材の「在留資格(ビザ)の維持」に直結する極めて重要な実務です。

人事が正しい知識を持ち、「副業を開始する前の事前報告」と「入管への適切な許可申請」、そして「確実な確定申告と納税」のフローを徹底すること。また、特定技能などの現業分野においては一律禁止の原則と義務的支援の範囲を正しく理解しておくことで、優秀な外国人材のエンゲージメント向上と、企業の法的リスク回避を両立させることができます。ぜひ、社内の外国人雇用の管理体制を今一度見直してみてください。

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