【企業担当者向け】宿泊分野における外国人雇用の基本と特定技能・技人国の違い|コンプライアンス遵守と2号移行まで完全解説

「訪日外国人旅行者の急増に伴い、ホテルや旅館の人手不足を解消したい」
「特定技能制度を活用して外国人材を採用したいが、1号と2号の違いや手続きの進め方が分からない」

このような悩みを抱えている宿泊事業者の採用・人事担当者様も多いのではないでしょうか。

2023年6月の閣議決定により、特定技能「宿泊分野」でも特定技能2号への移行が可能となり、長期的な雇用やキャリアパスの構築が現実的になりました。しかし、制度の要件や受け入れ手順を正しく理解しておかなければ、不法就労や基準不適合といった深刻な法的リスクを招く恐れがあります。

本記事では、特定技能「宿泊分野」の概要から、1号・2号それぞれの詳しい業務内容、2号へ移行するための具体的な要件や手順まで、実務に役立つポイントを網羅して解説します。

特定技能「宿泊分野」受け入れの概要

特定技能制度は、国内人材の確保が困難な特定産業分野において、一定の専門性や技能を持つ外国人を受け入れるための在留資格です。宿泊分野における受け入れの基本的な枠組みと、事業者に求められる要件を確認しておきましょう。

1. 対象となる宿泊施設
特定技能外国人を受け入れられる施設は、旅館業法第2条第2項または第3項に規定する「旅館・ホテル営業」の許可を受けた施設に限られます。簡易宿所営業や下宿営業、農家民泊などの住宅宿泊事業(民泊)は対象外となります。

2. 雇用形態と直接雇用の原則
特定技能外国人の雇用形態は、原則として「直接雇用」のみ認められています。派遣労働者としての受け入れはできませんのでご注意ください。

3. 宿泊分野特有の受入要件(協議会への加入など)
宿泊分野で特定技能外国人を受け入れる事業者は、厚生労働省が設置する「宿泊分野特定技能協議会」へ加入しなければなりません。初めて受け入れる場合でも、在留許可申請の前に協議会への加入手続きを完了させておく必要があります。

特定技能1号と2号の業務内容の違い

宿泊分野における「特定技能1号」と「特定技能2号」では、求められる技能レベルや担当する業務範囲が大きく異なります。

項目 特定技能1号 特定技能2号
技能水準 相当程度の知識・経験(即戦力レベル) 熟練した技能(管理・監督者レベル)
主たる業務内容 フロント、接客、レストランサービス、広報・企画などの宿泊サービスの提供 宿泊施設におけるフロント、接客、レストランサービス等の業務に加え、複数の作業員を指導・管理する業務
在留期間 通算で最長5年まで 上限なし(更新により永住申請も可能)
家族帯同 不可 可能(配偶者・子)

【注意したい業務範囲の考え方】
主たる業務であるフロントや接客等に付随して、日本人が通常行う関連業務(売店での販売、客室の清掃・ベッドメイキング、館内備品の補充など)を行うことは認められています。ただし、専ら客室清掃のみに従事させるような雇用形態は認められませんので、業務配分には配慮が必要です。

1号から2号へ移行するための具体的要件と方法

特定技能1号から特定技能2号へ移行するためには、試験の合格と一定の実務経験の双方が必要です。人材の長期定着を目指す企業は、計画的なキャリア支援を行いましょう。

1. 技能水準の証明(試験合格)
以下のいずれかの試験に合格することが求められます。

  • 宿泊分野特定技能2号評価試験(学科試験および実技試験)
  • 技能検定1級(関連する評価基準を満たすもの)

2. 実務経験の証明(監督者としての経験)
試験合格に加え、宿泊施設において複数の作業員を指導・監督しながら業務を統括した実務経験(班長やフロアリーダー等としての経験)が2年以上必要となります。社内で管理業務の機会を提供し、客観的に証明できる体制を整えておくことが重要です。

3. 2号移行の手続き手順

  • 社内での要件確認:実務経験年数(2年以上)および指導・管理実績の確認
  • 資格試験の受験・合格:宿泊分野特定技能2号評価試験などの実施スケジュールを確認して受検
  • 雇用契約の再締結:2号としての業務内容(管理業務の追加など)や待遇(昇給等)を明記した契約の締結
  • 在留資格変更許可申請:地方出入国在留管理局へ「特定技能1号」から「特定技能2号」への変更申請を行う

企業の担当者が押さえるべきコンプライアンス上の注意点

外国人雇用を適正に進めるため、企業担当者様が特に留意すべき法的コンプライアンスのポイントは以下の通りです。

特定技能と「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の業務の棲み分け
ホテル・旅館業でよく活用される在留資格に「特定技能」と「技術・人文知識・国際業務(技人国)」があります。この2つは任せられる業務範囲が大きく異なるため、厳密な棲み分けが必要です。

  • 特定技能(1号・2号):現場における「接客、フロント、レストランサービス、客室整備などの現場実務全般」に従事可能です。
  • 技術・人文知識・国際業務(技人国):学術的・専門的な知識を要する「マーチャンダイジング、広報、経理、通訳・翻訳業務、本部でのマーケティング業務など」が対象です。技人国の外国人に、連日ベッドメイキングや客室清掃、配膳などの現場作業(単純労働とみなされる業務)を専ら行わせる行為は入管法違反(不法就労助長罪等)となります。

現場実務を中心にマルチタスクで活躍してもらう場合は「特定技能」、語学力や専門スキルを活かしたオフィスワークや専任通訳として採用する場合は「技人国」を選択するなど、適切な資格手配を徹底しましょう。

* 日本人と同等以上の報酬額:同程度の経験・能力を持つ日本人従業員と同等以上の賃金を支払う義務があります。同等経験の日本人がいない場合は、職務内容や責任の範囲に照らして適正に設定してください。
* 支援義務の履行(1号の場合):1号特定技能外国人に対しては、事前ガイダンスや出入国時の送迎、住居確保支援、定期面談など、法律で定められた義務的支援を適切に実施する必要があります(登録支援機関への全部委託も可能)。
* 公的義務の遵守:労働関係法令(残業時間の上限や賃金不払い残業の防止)、社会保険関係法令、租税関係法令の遵守が必須です。未納や法令違反がある場合、受け入れ機関としての基準を満たさなくなります。
* 各種届出の徹底:雇入れ時や離職時、雇用契約の変更時などは、14日以内に出入国在留管理庁電子届出システム等で定期・随時の届出を行う必要があります。


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