特定技能の自社支援完全ガイド|要件・10項目の義務・最新の年1回届出ルールを解説
「特定技能の外国人を受け入れたいけれど、登録支援機関への委託費用を抑えたい」「自社でしっかりと教育・サポートを行いたい」とお考えの採用担当者様も多いのではないでしょうか。
特定技能制度では、一定の要件を満たせば、外部に委託せず自社で「支援」を行うことが可能です。しかし、そのためには法務省(出入国在留管理庁)が定める厳格な基準をクリアしなければなりません。
本記事では、特定技能の自社支援を行うための要件や、必ず実施すべき「10項目の義務的支援」の内容に加え、負担が大幅に軽減された最新の届出ルール(年1回への緩和)についても、行政書士の視点から詳しく解説します。
この記事のポイント
- 自社支援を行うために必要な「体制」と「受け入れ実績」の基準がわかる
- 10項目の「義務的支援」を漏れなく実施するための実務ポイントがわかる
- 【改正】四半期ごとから「年1回」に緩和された定期届出の運用がわかる
目次
Toggle特定技能の「自社支援」とは?委託との違いを解説
特定技能1号の外国人を受け入れる企業(特定技能所属機関)には、その外国人が日本での生活や仕事を円滑に行えるよう、「1号特定技能外国人支援計画」を作成し、実施する法的義務があります。
通常、この支援業務は専門機関である「登録支援機関」に全委託することが一般的ですが、自社で全ての支援を完結させることを「自社支援」と呼びます。
自社支援を選択する3つの大きなメリット
- 大幅なコスト削減:登録支援機関に支払う「委託管理費(1人あたり月額2万〜3万円程度)」が不要になります。人数が多いほどコストメリットは絶大です。
- 社内ノウハウの蓄積:外国人雇用の実務や入管法への理解が深まり、自社に最適な採用・育成スキームを構築できます。
- 従業員のエンゲージメント向上:直接支援を通じてコミュニケーションが増えるため、外国人の孤立を防ぎ、離職率の低下(リテンション)に繋がります。
自社支援を行うための「2つ」の主要要件
自社支援は「やりたい」と言えば誰でもできるわけではありません。出入国在留管理庁による厳しい審査があり、特に以下の2つの基準が重要視されます。
1. 過去2年間の「中長期在留者」の受け入れ実績
適正に外国人を受け入れてきた「経験」が問われます。具体的には以下のいずれかが必要です。
- 過去2年間に、就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)を持つ外国人を適正に雇用・管理した実績があること。
- または、支援責任者および支援担当者が、過去2年間に外国人の生活相談業務に従事した経験があること。
2. 支援責任者・支援担当者の選任と「中立性」
社内の役職員から担当者を任命します。ここでのポイントは「中立性」です。
| 役割 | 選任のポイントと任務 |
|---|---|
| 支援責任者 | 支援計画の作成や進捗管理、入管への届出など全体の責任を負います。管理職クラスが選任されるのが一般的です。 |
| 支援担当者 | 実際に空港送迎、役所同行、生活相談などを行う実務担当です。 |
⚠️重要:指揮命令系統の分離
支援責任者・担当者は、「支援対象の外国人と直接の指揮命令関係にないこと」が原則です。例えば、現場の直属の上司が支援担当を兼ねると、パワハラや悩み事の相談がしにくくなるため、総務や人事部門から選出することが推奨されます。
必ず実施すべき「10項目の義務的支援」
自社支援では、以下の10項目を一つでも怠ると「指導」や「改善命令」の対象となります。特に記録の保持が重要です。
- 事前ガイダンス:雇用契約締結後、入国(または在留資格変更)前に、労働条件や活動内容を3時間以上説明。
- 出入国時の送迎:入国時は空港の到着ロビーから事業所(または住居)へ、帰国時は保安検査場まで送迎。
- 住居確保・生活契約支援:賃貸物件の保証人、銀行口座の開設、携帯電話や電気・ガスの契約をサポート。
- 生活オリエンテーション:日本のルール、公共マナー、防災知識、医療機関の利用方法などを8時間以上説明。
- 公的手続き等への同行:役所への住民登録、マイナンバーカード手続き、社会保険、税金関連の手続きに同行。
- 日本語学習の機会の提供:地域の日本語教室の紹介や、オンライン講座の受講、教材購入の支援。
- 相談・苦情への対応:職場や生活の悩みについて、外国人が十分に理解できる言語(母国語等)で適切に対応。
- 日本人との交流促進:地域の祭事や町内会、社内イベントへの参加を促し、孤立を防ぐサポート。
- 転職支援(非自発的離職時):会社都合による解雇等の際、次の就職先を探すためのハローワーク同行等。
- 定期的な面談:3ヶ月に1回以上、支援責任者が外国人とその上司と面談し、報告書を作成。
【改正】定期届出が「年1回」に大幅緩和!
これまで自社支援の最大の障壁だったのが、膨大な「定期届出(四半期報告)」の事務作業でした。しかし、近年の規制緩和により、特定技能所属機関の事務負担が軽減されています。
改正のポイント:報告頻度の見直し
従来、3ヶ月に一度(年4回)提出が必要だった「支援実施状況報告書」等の定期届出が、「1年に1回」で済むようになりました。
これにより、毎回の書類作成に忙殺されていた担当者の工数は約4分の1に削減されます。ただし、以下の点には注意が必要です。
- 随時届出は別:住所変更、雇用契約の内容変更、支援計画の変更などは、その都度(14日以内など)届け出る必要があります。
- 記録の保存:届出が年1回になったとしても、3ヶ月に1回の面談や各支援の実施記録は、都度作成して保存しておく義務があります。
自社支援を成功させ、リスクを回避するための注意点
- 多言語対応の壁:相談窓口やガイダンスは「外国人が十分に理解できる言語」で行うのがルールです。社内に通訳ができるスタッフがいない場合は、外部の電話通訳サービスや翻訳アプリの適切な活用を検討してください。
- 書類の管理(証跡):入管の調査(実地検査)が入った際、最も厳しくチェックされるのが「支援の証拠」です。面談記録や写真、領収書などは整理して保管しましょう。
- 法令遵守の徹底:自社支援を行っている最中に、賃金未払いや不当な解雇、不法就労助長などの法令違反があると、最長5年間は外国人の受け入れができなくなる「欠格事由」に該当してしまいます。
まとめ:安心・安全な自社支援体制を構築するために
特定技能の自社支援は、コストを抑えつつ、外国人と企業の信頼関係を深めるための絶好の手段です。定期届出の頻度が下がった今こそ、自社支援へ切り替える(または最初から自社で行う)チャンスと言えます。
しかし、万が一「支援漏れ」や「届出ミス」があった場合、会社の信用失墜だけでなく、事業継続に支障をきたす可能性もあります。初めて自社支援に取り組む際は、専門家のアドバイスを受けながら、強固なコンプライアンス体制を整えることを強くお勧めします。
「知らなかった」では済まされないリスクから会社を守るために。
当法人では、外国人雇用に関する最新情報や実務ポイントをお届けする無料メールマガジンを配信しています。
ぜひこの機会にご登録いただき、安心・安全な外国人採用にお役立てください。
