特定技能「自動車整備分野」の受入れ要件と実務解説|1号・2号の違いと注意点

外国人材の活用が進む自動車整備業界において、「特定技能」制度を活用した採用が急増しています。しかし、自動車整備分野における特定技能の受入れには、他分野にはない厳格な独自規制や法的ハードルが存在します。

「実務経験の年数を誤認していた」「協議会への加入タイミングを間違えてビザ申請が却下された」といったトラブルは、企業のコンプライアンス(法令順守)体制や採用計画に致命的なダメージを与えかねません。

本記事では、企業の外国人雇用担当者様に向けて、特定技能「自動車整備分野」における受入れ要件、1号・2号の業務範囲の違い、そして最難関とされる2号移行の要件まで、実務ポイントを網羅して分かりやすく解説します。

自動車整備分野特有の注意点(受入れ企業の絶対義務と厳格な基準)

自動車整備分野で特定技能外国人を受け入れる場合、他分野には見られない極めて厳しい独自規制が設けられています。受入れ企業(特定技能所属機関)が必ず押さえておくべき「絶対義務」は以下の5点です。

1. 事業所要件(認証工場・指定工場であることが必須)

受入れ企業の事業場は、道路運送車両法第78条第1項に基づき、地方運輸局長から認証を受けた「認証工場」または「指定工場(民間車検場)」でなければなりません。認証を受けていない整備工場では、特定技能外国人を受け入れるスタートラインに立つことすらできません。

2. 登録支援機関への委託時における強力な縛り

自社で支援を行わず、1号特定技能外国人の支援計画の全部を「登録支援機関」へ委託する場合、委託先の支援機関にも厳しい要件が課されます。委託先の登録支援機関は、次のいずれかの要件を満たす者を「支援責任者」または「支援担当者」として配置していなければなりません。

  • 自動車整備士1級または2級の資格保有者
  • 自動車整備士の養成施設において5年以上の指導実務経験を持つ者

委託先を選ぶ際は、自動車整備分野の支援要件を満たしている登録支援機関かどうかを必ず確認する必要があります。

3. 労働者派遣の全面禁止(直接雇用が絶対条件)

自動車整備分野における特定技能外国人の雇用形態は、直接雇用契約のみ認められています。農業や書籍製造等の一部分野で認められる派遣雇用は一切禁止されています。

万が一、偽装請負などで実質的な派遣受入れや他社への派遣を行ったことが発覚した場合、「虚偽文書の行使等」とみなされ、不法就労助長や基準不適合となり、受入れ企業は以後5年間、すべての特定技能外国人の受入れが不可能となる極めて重い処分が下されます。

4. 協議会への完全な「事前申請・加入」義務(令和6年6月15日厳格化)

制度改定により、協議会加入のタイミングが厳格化されました。以前認められていた「入国後4ヶ月以内の加入誓約(猶予)」は完全に廃止されています。

現在は、地方出入国在留管理局へ在留諸申請を行う「前(事前)」に「自動車整備分野特定技能協議会」への加入手続を完了させ、交付された「構成員資格証明書」を申請書類に添付することが絶対条件です。加入には一定の期間を要するため、スケジュールに余裕を持った事前準備が不可欠です。

5. 実務経験証明書の交付義務

特定技能外国人が退職や転職等に際し、自社での実務経験を証明する書面の交付を求めてきた場合、受入れ企業は適法にこれを交付する法的義務があります。これを拒否した場合は基準不適合となります。

1号と2号の業務内容の違いと付随業務(関連業務)の線引き

現場での配置ミスや入管(出入国在留管理局)の監査で最も指摘されやすいのが、「外国人に行わせる業務の範囲」です。主たる業務と付随業務の範囲を正しく理解しておかなければなりません。

1号特定技能外国人の業務内容

指導者の指示を理解し、または自らの判断により、特段の訓練を受けることなく直ちに以下の作業に従事するレベルです。

  • 日常点検整備
  • 定期点検整備
  • 特定整備(分解整備、電子制御装置整備)
  • 特定整備に付随する基礎的な業務(電子制御装置の整備や板金塗装など)

2号特定技能外国人の業務内容

2級整備士レベルの熟練した技能を要し、自らの判断で高度な整備業務をこなすとともに、「他の要員への指導を行う業務」を担います。

  • 日常点検整備、定期点検整備、特定整備
  • 特定整備に付随する一般的な業務(電子制御装置の高度な整備、板金塗装など)
  • 他の要員(日本人若手、技能実習生、1号特定技能など)への指導・監督業務

付随的に認められる関連業務の範囲

自動車整備に従事する日本人が通常行っている以下の関連業務に、メイン業務の合間に「付随的」に従事することは認められています。

  • 整備内容の説明、関連部品の販売・発注(部品番号検索など)
  • カーナビ・ETC等の電装品の取付、下廻り塗装
  • 洗車、車内清掃、構内や設備機器の清掃、部品等の運搬

⚠️「専従」の厳格な禁止リスク
関連業務に取り組むこと自体は違法ではありません。しかし、「整備作業を行わせず、一日中洗車や車内清掃、部品運搬ばかりさせている」といった実態がある場合、資格外活動や不法就労と判断され、不法就労助長罪に問われるリスクがあります。

特定技能2号への移行要件と具体的方法

特定技能2号は、在留期間の上限がなくなり、要件を満たせば配偶者や子どもの家族帯同(家族滞在ビザ)が認められるため、貴重な即戦力人材の長期定着に直結します。

自動車整備分野における2号移行は、他分野と比較して実務経験要件が厳しく設定されている点が最大の特徴です。

2号移行に必要な3つの要件

  1. 認証工場における通算3年以上の実務経験(他分野より長い基準)
    外食や宿泊、ビルクリーニングなど他分野の2号移行では「実務経験2年以上」が主流ですが、自動車整備分野では「地方運輸局長の認証を受けた工場における通算3年以上の実務経験」が必須です。
    ※対象となる作業:分解、点検、調整等の整備作業(特定整備、電子制御装置整備、板金塗装に付随する整備等)
  2. 技能(試験)要件の充足
    以下のいずれかの試験に合格し、証明書を提出する必要があります。

    • 「自動車整備分野特定技能2号評価試験」の合格
    • 「自動車整備士技能検定試験2級」の合格
  3. 現場での指導実績
    2号の定義に基づき、現場で日本人若手スタッフ、技能実習生、1号特定技能外国人等に対して、整備作業の具体的な指示や安全確保などの「指導を行っていた実績」が実質的に求められます。

【お得情報】技能実習2号からの「無試験(免除)移行ルート」

すでに技能実習生を受け入れている企業や、元技能実習生を採用したい企業にとって、非常に大きなメリットとなる免除ルールが存在します。

自動車整備職種・自動車整備作業の技能実習2号を良好に修了した者

技能試験(特定技能1号評価試験)および日本語能力試験(JLPT N4やJFT-Basic等)の双方の試験が「完全免除」となり、無試験で「特定技能1号」へスムーズに移行可能です。

その他の職種の技能実習2号を良好に修了した者

他職種の技能実習を修了した者の場合、日本語能力試験は「一律免除」となります。ただし、技能試験(自動車整備分野特定技能1号評価試験)の合格が別途必要となります。

まとめ・専門家からのアドバイス

自動車整備分野における特定技能外国人の受入れを成功させる鍵は、まず「自社の整備工場が地方運輸局長の認証を受けているか」というスタートラインの確認にあります。

また、申請段階での「協議会への事前加入」など、最新の法令順守体制を構築することがトラブルを防ぐ第一歩です。

単なる穴埋めの人手不足対策として終わらせるのではなく、1号から2号への昇格を見据え、3年以上の実務経験期間の中で計画的に分解整備や指導の機会を与えるキャリアパスを企業側が描いておくことが、優秀な整備人材の定着と企業の成長につながります。


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